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運営顧問による点検評価(4ページ) 分子研リポート2013 | 分子科学研究所

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点検評価と課題 301

7-3 運営顧問による点検評価

運営顧問による組織・研究評価及び提言

運営顧問 廣田 襄(京都大学名誉教授) 齋藤軍治(名城大学農学部教授) 増原 宏(台湾国立交通大学講座教授) 第1回運営顧問会議 2013年12月25日 13時半〜17時半

内容

(1)全体像を所長が説明(現状の紹介,将来計画など)

(2)研究領域(理論・計算,光,物質,生命・錯体)と研究施設の現状,将来計画等を主幹・施設長が説明 第2回運営顧問会議 2014年1月9日 11時〜17時半

内容

(1)研究室・施設の見学

(2)所長,研究総主幹との意見交換

(3)主幹・施設長との意見交換

7-3-1 報告書

2013年12月25日に3名の運営顧問(廣田 襄,齋藤軍治,増原 宏)は,研究所の現況と将来計画についてヒ アリングを行い,所長および各部門(理論・計算分子科学,光分子科学,極端紫外光研究施設,物質分子科学,生命・ 錯体分子科学,協奏分子システム研究センター,岡崎統合バイオサイエンスセンター)の研究主幹より説明を受け, 質疑・応答を行った。2014年1月9日に,UV S OR 施設,光分子科学研究室,岡崎統合バイオサイエンスセンター(NMR 装置)などの見学を行い,その後所長および研究主幹とヒアリングおよび見学の内容を基に,研究所の課題,とくに 研究所の目指す新しい方向性,組織,人事,各研究グループの研究の現状と課題,共同研究について自由討論形式で 意見の交換を行った。

分子研は化学と物理の学際的分野である分子科学における大学共同利用研究所としてスタートし,創立当時から豊 かな研究費と整備された装置に支えられ,多くの優れた研究を行って国際的にも高く評価される優れた分子科学研究 のセンターであった。また人材育成の面では,物理化学分野を中心に我が国の大学における研究・教育のリーダーと して活躍する人材を数多く輩出して分子科学の発展に大きく貢献した。しかし,創立から40年が経ち分子科学は現 在ではより広範な領域と関わりを持つ分野に拡がっている。論文引用度指数などに示されるように,分子研は現在で も高い研究水準を維持しているが,大学の研究環境が整備され,とくにナノテクノロジーとバイオ関係の予算が大幅 に増えたこともあって,分子研の V isibility が下がってきたことは否めない。また,大学院生が少なく各研究グループ の規模が小さいために研究活動を大きく展開することが難しいという問題を抱えている。研究のグローバル化が一層 進み,国内でも W P I 拠点が整備されてくる状況と,分子科学研究ならではの特別の装置を持つ予算が保証されない ことを考えると,国内的にも国際的にもより存在感のある研究所になるためにはどのような方向を目指すべきであろ うか。それには人事の完全な国際化,大きな研究グループを作ることを良しとする柔軟な運営が必要であろう。また, 分子科学における国際センターとして,国内・国外の世界的に優秀な分子科学研究者グループとの頭脳・人材相互交 流をはかることが不可欠である。ヒアリングおよび見学後の討論では,新分野の開拓,人材の育成,国際交流および

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302 点検評価と課題

共同研究に関する問題を中心に議論が行われた。本報告書は会議で出された意見に,その後各顧問から出された意見 も加えて廣田がまとめたものである。

1.研究の現状,新しい方向と新分野の開拓

分子研はこれまで,理論・計算化学,光分子科学,分子分光学,分子物性科学などの分野において国際的にも高く 評価される顕著な業績をあげてきた。理論・計算化学および光分子科学分野では現在も高度で活発な研究活動が続け られている。一方,物質・分子物性の研究では教授の交代の時期でもあり,まだ研究の新しい方向性がはっきり見え ていないように思われる。生命・錯体分野では新しい教授の着任が続いており,今後の大きな発展を期待したい。

分子研における研究の方向としてどのようなものが望ましいであろうか。分子研の研究者には学術研究における世 界の指導的役割が要請される。研究課題,観察手法,研究対象,理論などにおいて,世界的な観点から独創的で挑戦 的なものであるかを念頭において切磋琢磨することが期待される。分子研では比較的に若い教授群を中心に,分子研 の持つ恵まれた研究環境(研究および技術支援の人材,共通設備の充実など)を活かして,大型の研究よりもさらに 先を見据えた萌芽的研究や人材育成を重視した研究も望まれるであろう。この点から平成25年度より発足した「協 奏的分子システムの創成」を目指す新たな研究組織の今後の活動が期待される。この組織は分子集団の自律的反応の 流れを創る優れた機能をもつ分子系を創成することを目的とし,既存の「エネルギー変換」,「物質変換」,「分子機能 発現」,「生命体的分子システム」の4領域を束ねるものである。そして,その実現のために分子系の極限観測とコン トロール法の開発を目指す「極限分子科学」の構想が次の概算要求の目標として示された。これに関して,次のよう な意見が出された。

・ 「協奏分子システムの創成」研究に似た研究は他でもやっている。他との違いは何か。分子研らしさはどこにあ るか。世界的な流れに乗りすぎているのではないか。もっと構造と結合と機能の原点に立ち返って基礎に取り組 むべきではないか。

・ 「協奏分子システム」の研究に「極限分子科学」を組み合わせてはじめて分子研らしさが生まれる。そのために は新しい研究手法と装置開発が必須である。

・ 明確な問題意識を持って研究を進めるべきである。相互作用系の「極限分子科学」の研究は若い人が中心になっ て提案し,展開すべきであろう。

・ 大きな競争的資金(国内,国外)の獲得による資金・人材(または場所)の確保により,個人の研究体制の強化 および研究者としての世界的認知度の向上を図るべきである。

「協奏分子システムの創成」の研究に限らず,一般に新分野の開拓と新しい研究への挑戦に関して次のような意見 が出された。

・ 分子研がどのような新分野を開拓するかに海外は注目しているが,最近は visibility が落ちているように思われる。

・ 分子研に着任する若手(准教授)には,今までやってきた仕事の延長でない新しい分野に挑戦するチャレンジ精 神が欲しい。准教授にはチャレンジ度に応じた処遇を考えるべきではないか。

・ P I 同士の切磋琢磨による相乗効果によって新しい研究が生まれるような環境作りが望まれる。他分野の研究者と コミュニケーションのできる人材の養成が重要である。

・ コロキウムや各領域での合同セミナーをもっと活発にして,若手が新しい研究に挑戦する雰囲気を醸成すべきで ある。

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点検評価と課題 303

・ 国際的にもう少し化学分野での存在感を増すような努力が必要である。とくに物質・物性の研究では物理の一流 のジャーナルのみでなく,分子科学や物質科学の視点で研究成果を練ることにより化学や生物学の一流のジャー ナルへも論文を発表すべきである。

・ 各当該研究分野の研究者コミュニティーで,話題になっている原理的な研究課題は何であり,将来の発展性や波 及効果はどうであるか,研究戦略を案出する。

・ 分子研内の異分野の研究者の融合による挑戦的新分野開拓を期待する。学術的重要性,科学的(社会的)位置づけ, 解決法,研究条件,戦略(資金,装置,人など)を議論し,挑戦的な融合プロジェクトを立案することが望まれる。

・ 岡崎研究機構内に基生研,生理研,岡崎統合バイオサイエンスセンターがあるにもかかわらず,これまで生命分 子科学関係の共同研究がなかった。もっと岡崎統合バイオサイエンスセンターを活用するなどして,研究グルー プの異なる個人研究者同士の融合プロジェクトが生まれることを期待したい。

2.組織,人事,人材育成に関して

所長のリーダーシップのもとに優秀な若手を教授に抜擢し,若手独立フェローの制度を導入するなど,人事に関し て若手研究者を発掘して育てる意欲的な改革が行われていることを高く評価する。今後は国際化に対応して外国人研 究者をふやすために,人事公募に関する書類,手続きを基本的に英文で行うことを考えるべきであろう。

分子研が内部昇格を禁止してきたことは,人事の流動性を高め,大学との人事交流を推進してきた点において大き な意義があった。一方で,優秀な若手研究者を分子研にキープできないという問題点もある。この問題は大学におけ る人事とも関係し,今後慎重に検討すべき課題であろう。

分子研の教授,准教授が研究に関して独立であることは,准教授が独自の研究を展開できる望しいポリシーである が,各研究グループが助教+ P D (2助教)の体制で小さく,大学院生も少ないために挑戦的な研究をするには人手 が足りないという問題がある。しかし,現状でも相当大きなサイズでの研究室運営に成功しているグループもあり, この問題の改善のために所員の一層の努力が望まれる。研究グループのサイズを大きくするための具体的な提案とし ては以下のような意見があった。

・ 外部資金をさらに積極的に導入してより多くの P D (外国人を含めて)を採用し,優れた研究の魅力によって優 秀な大学院生を確保する一層の努力が必要である。

・ 研究能力があっても分子研のような研究環境に向いている人とそうでない人がある。所員の採用の際に,分子研 でも大きなグループを作れる適性のある研究者を見極めることが必要である。

・ J S PS の外国人研究員枠を利用するなどして外国人 PD を増やす努力をすべきである。また,外国人所員を生かし た人材の国際的なネットワークを構築することが,優秀な外国人 PD を増やすために有効であろう。

若手研究者の育成に関して次の意見があった。

・ 若手独立フェローは素晴らしい制度であって,定着が望まれる。しかし,彼らの研究を発展させるには,今後 PD などで彼らをサポートすることも必要であろう。

・ 若い人の国際化は必須であり,年に1−2ヶ月程度のサバティカル制度の導入が必要ではないか。

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304 点検評価と課題

3.共同利用機関としてのあり方と国際交流に関して

分子研は大型の施設,装置として U V S O R 施設,レーザー開発,スパコン,高周波 N M R などを有して,分子科学 の研究者に共同利用の場を提供している。これらの装置をトップレベルで維持・整備してゆくには継続的な努力と工 夫が必要である。また今後の共同利用では国際化のさらなる推進が期待される。それに対応するには,研究者と事務 職員あるいは技術職員の間の連携を円滑に行う U R Aの活用が必要であろう。共同利用に関しては次のような意見が 出された。

・ U V S O R は高度化の完成で,この種の施設としては先端的で特徴があり国際的にも競争力のあるものに生まれ変 わった。そろそろ次期の計画を考え始めるべきであろう。

・ 分子研のスパコンの能力は相対的に低下している。国は「京」コンピュータのような超大型機に力を入れているが, 先端分子科学として特徴的な利用はあるのだろうか。

・ レーザー開発では先端的な開発が行われてきたことは認めるが,分子科学の研究に生かせるような開発も目指し て欲しい。

・ 900M H z N M R では固体試料測定のための整備などが着々と進んでいる。また,共同利用の試料測定に対応でき る技術職員を置いていることは高く評価される。

・ 通常の一般的な研究設備は所内の研究者が共通装置として利用できることが重要で,所内の人が使わない装置に 対して技術職員を配置して共同利用に対応する必要はない。

・ ヘリウム枯渇問題が深刻になっている。S QUID などヘリウムを使う共同利用を強化してはどうか。

分子研が分子科学研究における世界のセンターになるためには国際的な頭脳・人材の相互交流の強化が必須である。 これに関して次のような具体的な提案が出された。

・ 一流研究者(国内・国外)の分子研短期・長期滞在と海外一流研究所への訪問(短期)・講演・講義を強化する; これらは,世界的研究ハブ構築に不可欠である。

・ インフラ整備:海外からの研究者家族(含子供)の長期滞在に関する整備(衣食住,医療,教育,娯楽等々の世 話人,それらの要点を記したパンフレット作成;これらに関して上記 W PI 拠点が良い経験をつんでいる)

・ J S PS は海外からの研究者招聘事業を行っており,著名外国人の招聘において,関連する研究所や大学での講演を 推奨している。この事業を用いることにより,分子研研究者の国内・国外での認知度を高める。

・ 国内・外の大学・研究機関における講演・講義で研究内容を紹介し,優秀な若手研究者・院生をひきつける。優 秀な外国人研究者の発掘および育成に関しては,優れた体制と業績を持つ幾つかの拠点(W P I プログラム拠点な ど)があり,それらを参考にしたらどうか。

・ 国際会議は各年開催されているが,上記融合課題や新規プロジェクトに関するテーマでの国際会議の開催を勧め る。また,その会議テーマに即した論文を分子研研究者・国際会議参加者,それ以外の関連研究者から集め編集し, 世界的ジャーナル特集号として出版する。その巻頭言に,分子研の活動内容を含め上記融合課題や新規プロジェ クトに関するテーマの学術的重要性・新規性を訴える。また,特集号の発刊は若手研究者の論文編集能力向上に 資する。

参照

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